コラム・イベント情報と活動報告
コラム「歯科心身症の社会経済的背景について 」
歯科心身症は、口腔内の痛みや不快感が長期間続くものの、通常の歯科検査では器質的な原因を特定できない病態を指し、その発症には心理社会的要因が密接に関与していると考えられています。しかしながら、歯科心身症と社会経済状況との関連については全体像が不明確であり、海外では一部の事例をもとに「歯科心身症患者全体に生活困窮者が多い」といった誤った印象や偏見(スティグマ)が生じる傾向も見られていました。
そこで、東京科学大学が現役世代の生活困窮者における歯科心身症患者の社会経済的背景を明らかにするため、大規模な後ろ向き調査を実施したとのことです。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科 歯科心身医学分野の須賀隆行助教と豊福明教授らの研究グループによるもので、研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されています。
その結果、歯科心身症患者のうち公的扶助を受給している生活困窮者は全体の2.7%であり、さらに現役世代(18〜64歳)に限ると1.5%にとどまっていました。これは、歯科心身症患者のうち経済的な支援を必要とする人はごく一部にとどまることを示しています。
そして、この1.5%にあたる現役世代の生活困窮患者について臨床的特徴や社会的背景を詳細に分析した結果、この特定のグループでは、90.9%が現在または過去に精神疾患(うつ病、不安症、統合失調症など)の診断を受けており、74.5%がポリファーマシー(多剤併用)の状態にあったそうです。さらに、81.8%が単身生活、76.4%が非就労状態であり、深刻な社会的孤立と経済的脆弱性が浮き彫りになりました。これらの結果から、歯科心身症患者のごく一部には、高度に複雑な社会的支援を必要とする集団が存在することが明らかになりました。
この研究で、大多数の歯科心身症患者は社会生活を営みながら治療を受けているが、ごく少数ながら公的扶助を受給している現役世代の患者がおり、困難を抱えている状況が判明しました。
研究グループは「今後は、本研究で明らかになった患者の多様性を踏まえ、それぞれの層に適した治療体制や支援プログラムの開発を進める。特に、今回明らかになった患者層に対しては、有効な社会的処方も含め、医科・歯科・福祉(ケースワーカーやNPO)が連携する包括的ケアモデルのあり方を検討する。将来的には、このモデルを全国の医療機関や自治体へと広げ、より望ましい地域医療体制の実現を目指したい」と述べています。
イベント情報
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