お遍路パワー」


「四国遍路」、今や空前のお遍路ブームなどと表現される場合もありますが私の担当している土曜日の番組でも7月からこの四国遍路を紹介するコーナーがスタートし毎週1つの寺の紹介とその周辺情報を放送しています。今年末で高知県室戸市にあります第26番札所「金剛頂寺」までご紹介できる予定です。どちらかというと信仰色よりもドライブお遍路感覚のレジャー的な番組となっています。番組で紹介した内容は
RNCのホームページや携帯サイトともリンクしていますのでまたお暇な時にでもご覧下さい。
さてそんな「四国遍路」先生方の中にもすでに88カ寺全て周り高野山へもお参りをされた方もいらっしゃるのではないでしょうか?私自身といえば、旅行や仕事などの都合で数カ寺はお参りしたことはあるのですが、(時間がないという理由を勝手につけて)週末遍路の経験さえありません。両親はもとより知人の中に全て周ったという人もいますからお遍路さん人口はかなり多いとおもいますが「歩き遍路」となるとまだまだ少ないのではないでしょうか?
11月の初め私は88カ寺を全て周り今まさに1400キロを歩き終えようとしている若者達にお話を伺うことができました。彼らは「四国お遍路Slow Walk Shikoku88」ということで全国から集まってきました。この歩き遍路を主催しているのはひきこもりの若者達を支援している「NPO法人ニュースタート事務局」(事務所は千葉県にあります)新潟や京都本当に全国から引きこもりの経験をもつ20代の若者が12名とニュースタート事務局のスタッフ7名が9月6日から歩き始め11月5日に大窪寺で結願を迎えました。そう私がインタビューをしたのは「ひきこもり」の若者達でした。約60日の歩き遍路の経験は彼らにとってかなり刺激的なものだったようです。毎朝早く起きてひたすら歩くといういままでと全く違う生活、社会との関わりを絶ってきたという彼らは毎日多くの人と自然に関わりを持つことになります一緒に歩く仲間達は勿論各地でうけるお接待、すれ違う人との挨拶。
まさに人とのつながり、関わりを持ちながらの60日であったといいます。
京都からきた26歳の男性は「心は晴れやかです。優しい人もたくさんいることを知りました。これからは気合いれて生きていきます。」新潟からきた20代の女性は「体力つきました。体力がつくと考えることができるようになったんです。歩いてよかった。終わるとなるとちょっと寂しいです。」彼らのサポートをしながら一緒に歩いたスタッフの女性が静かに言いました「この2ヶ月本当にいろいろなことがありました。今は頭の中がぐちゃぐちゃです。もう続かない、辞めてしまえと思ったことも何度もありました。でも今ゴールを前に彼らの言葉がなによりの答えです。歩いてきた証だと思います。」参加者のほとんどは自分からではなく家族からの進めで今回四国にやってきました。人とのか関わり社会との関わりを頑なに絶ってきた彼らではありますが終わってみればいままでと違う自分がいることに一人一人が気づいているようでした。勿論これで全て解決ということにはならないと思いますが、彼らば今までとは違う新しいスタートには立っているかのように見えました。お遍路にとはいったい何!まさにみえないパワーがあるようです。
そのパワーの源の一つは「生きていける体を自分で作ること」ではないかと感じました。インタビューした若者の一人がにこにこ笑いながらに言いました「ひきこもりの人は歩き遍路お勧めです」そういえば空海もひきこもりだったという説があります。もともとエリート人生に悩み修行のため四国や近畿の山奥でこもり、四国路を歩いた後また高野山にこもったとか・・・もしかすると人生や社会への不安という空海がもったかもしれない悩みを、1200年の歴史を経て同じような悩みを持つ若者がまた空海のたどった道を歩く。
やはり空海さんは不思議な人です。